NUiMEnoKozue’s blog

死なないように生きていくのでよろしくお願いします

安子

今日も夜中の世界にいる

薄暗い箱には様々なライトが明るい

当初は美しく光っており心惹かれたものだ

輝くものの下に浴びさぞ綺麗だっただろう

だか、今にいたってはどこに灯っているか

目が苦しいくてしょうがない

この女安子がどんな誰にどのように映るのか皆目検討がつかない日々なのだ

 

「いらしゃい」

 

合言葉はこの夜にとって欠かせない

が、裏側にはうんざりする煙が張り付いて離れることはない

男達の群れの中にいつも通りの愛嬌を配る

いい加減こんなガラスの仮面など跡形も残らず捨ててしまいたい

男達は揃てこう言う

 

「ママは本当に優しくていい女だ」

「またまた、そんなこと言って」

「気配り目配りがきいたその目と手が好きなんだよ」

「そんなこと誰にでも言ってるんでしょ」

 

客はこの後すぐに席を立ち若いみずみずしい水晶体に移る

新鮮みのある笑顔はいきよいよく素晴らしくほとばしる

実に華やかである

やはりそちらの方が男達の群れは心踊り、心騒ぐに違いない

 

「いらしゃい」

 

客は次々にやって来る

閉店間際一人の男がドアを優しく開けるのだった

 

「今日も来てくれてありがとう」

 

この男は慣れたいつもの席に腰を落とす

 

「今日も変わらないなここは」

「そうね」

 

その男の目に自分を写しだす

そして男はきりだす

 

「この後は誰かと忙しいのか」

「そんなことはないわよ」

 

二人は淡々と話だすのである

安子は手慣れた手つきで続ける

 

「タクシーを呼ぶわ」

 

この男も返す

 

「あー、頼むよ」

 

 

いつものタクシーの中

相変わらず真っ暗でなに一つ見えない

だが男は安子の手をぎゅっと握りひと時も離さなさないのであった

安子に気を遣う男

 

「今日も疲れたんじゃないのか?」

「平気よ」

「そうか」

 

タクシーは停まる

 

 

一部屋に入る

男は安子に躊躇なく触れる

 

「ママ今日も綺麗で可愛いよ」

「ありがとう」

 

2人は快感に沈んで行く

また互いに求めてしまっている、激しさを

欲、欲、欲、欲まみれの人間が嫌いだったが

この瞬間はその渦から伸びた手を好むようになってきた

大人になると身体を許すことがなぜ簡単になってしまうのか

短距離走

真っ白い時計が黒ずんでいくようだ

 

 

何時間たったか

安子は部屋に一人だ

いつもでたっても瞼からまつ毛の先まで未だに忘れられない

真夜中の薄暗い重なりを

 

 

外は晴天で眩しい

よそよそしい顔にみえてしまう

服装は昨日と同じだ

どうしても朝帰りを責められてる気がする

隠れるように帰路を始めた