NUiMEnoKozue’s blog

死なないように生きていくのでよろしくお願いします

空港

驚いた空港だった。

 

「行こう」

 

心の中は彼から急に手を引かれる気分である

 

滑走路を車がなぞり走る

何年ぶりだろうか

旅行以外来ることなんて思わなかった

 

(なぜに?)

 

不思議でしょうがない

だが窓から見える空港がこんなにも綺麗だとは思わなかった

 

 

車はあっという間に駐車場に止まる

彼は早々と降りるのだった

とても楽しみにしている様子が分かりやすい

私というと戸惑いでしかない

ゆっくりと足を地につけた

 

(待って)

 

足取りも全くの違いがでてしまう

好奇心の塊はとてつもないテンポで歩き行く

ついて行くのがやっと

少し早歩きで彼を精一杯に追う

 

(待って)

 

建物のドアは無機質に開く

私達はそれを通過するのであった

彼は一体どこに行くのか

なにが目的なのかがつかなさすぎる

置いてけぼりにされないかと寂しい気持ちが湧く

 

「こっちだ」

「え、どこよ?」

 

いきなり階段を上がり始める

スタスタスタスタ

とてもじゃない勢いよいだ

私は不安を抱えながら

コツ、コツ、、コツ、、、コツ、、、、

 

 

彼がドアを開き涼しい風が入り込むのであった

そして明かされる

 

「ここだよ!ここに連れて来たかったんだ」

 

そこは飛行機が飛び立つ瞬間が間近に見える場所だった

激しい機械音が散らばる

気邪気な彼

 

「いい眺めだろう」

「とっても」

 

行きの車からはあんなに小さく灯っていた光が大きな輝きを放ち辺りいちめんに広がる

この大きな乗り物はどんな風をきって気持ちいいのか

 

季節は夏の終わり頃

肌寒かったのは私すこし寒い

途端に私の体を引き寄せる彼

彼の方へ徐々に体を預ける私

急に胸が熱くなっていくはどうして?

 

「ねえ、私のこと好き?」

「好きだよ」

「どんなところが?」

「そう言うところだよ」

「え?」

 

彼の体温をじわじわと感じる

特に手のひらが暖かくて心地いいのだ

 

彼のどんなところが好きだって?

そう私の長い所をみてくれるその目線だ

 

半分は私が持っているレンズで

片いっぽはあなたが映しだすレンズだったらいい

 

しまった、私、いつの間にか忘れてしまったんです

 

恋焦がれることがこんなに幸福だとは

一緒に見る夜景がこんなに美しいとは

安子

今日も夜中の世界にいる

薄暗い箱には様々なライトが明るい

当初は美しく光っており心惹かれたものだ

輝くものの下に浴びさぞ綺麗だっただろう

だか、今にいたってはどこに灯っているか

目が苦しいくてしょうがない

この女安子がどんな誰にどのように映るのか皆目検討がつかない日々なのだ

 

「いらしゃい」

 

合言葉はこの夜にとって欠かせない

が、裏側にはうんざりする煙が張り付いて離れることはない

男達の群れの中にいつも通りの愛嬌を配る

いい加減こんなガラスの仮面など跡形も残らず捨ててしまいたい

男達は揃てこう言う

 

「ママは本当に優しくていい女だ」

「またまた、そんなこと言って」

「気配り目配りがきいたその目と手が好きなんだよ」

「そんなこと誰にでも言ってるんでしょ」

 

客はこの後すぐに席を立ち若いみずみずしい水晶体に移る

新鮮みのある笑顔はいきよいよく素晴らしくほとばしる

実に華やかである

やはりそちらの方が男達の群れは心踊り、心騒ぐに違いない

 

「いらしゃい」

 

客は次々にやって来る

閉店間際一人の男がドアを優しく開けるのだった

 

「今日も来てくれてありがとう」

 

この男は慣れたいつもの席に腰を落とす

 

「今日も変わらないなここは」

「そうね」

 

その男の目に自分を写しだす

そして男はきりだす

 

「この後は誰かと忙しいのか」

「そんなことはないわよ」

 

二人は淡々と話だすのである

安子は手慣れた手つきで続ける

 

「タクシーを呼ぶわ」

 

この男も返す

 

「あー、頼むよ」

 

 

いつものタクシーの中

相変わらず真っ暗でなに一つ見えない

だが男は安子の手をぎゅっと握りひと時も離さなさないのであった

安子に気を遣う男

 

「今日も疲れたんじゃないのか?」

「平気よ」

「そうか」

 

タクシーは停まる

 

 

一部屋に入る

男は安子に躊躇なく触れる

 

「ママ今日も綺麗で可愛いよ」

「ありがとう」

 

2人は快感に沈んで行く

また互いに求めてしまっている、激しさを

欲、欲、欲、欲まみれの人間が嫌いだったが

この瞬間はその渦から伸びた手を好むようになってきた

大人になると身体を許すことがなぜ簡単になってしまうのか

短距離走

真っ白い時計が黒ずんでいくようだ

 

 

何時間たったか

安子は部屋に一人だ

いつもでたっても瞼からまつ毛の先まで未だに忘れられない

真夜中の薄暗い重なりを

 

 

外は晴天で眩しい

よそよそしい顔にみえてしまう

服装は昨日と同じだ

どうしても朝帰りを責められてる気がする

隠れるように帰路を始めた

その日のことはよくわからないけど愛し合っていたことはわかる

互いの存在は強く熱かった

 

しかし、溝が出てしまう

声が聞こえるとても悲しい声

「ごめんね」

よくわからないけど別れの日はそう遠くないようだ

頻繁に言っていた言葉がある

「もう会えないのかもしれない」

と泣いていた

けどみずみずしい手は必ずすぐそばにあった

ある日

泣き声がいつまでたってもやまない

どうして?

そして彼女の決断はかたかった

「最後にしたい」

と言った

彼女がどうしてそう言ったかはわからないけど彼女の手は頻りにお腹をなでる

また、言ってしまう

「本当にごめんね」

 

どれぐらい彼女の側にいただろう

気付けば彼女に包まれていた

お別れの日は着実と近づくが彼女が僕、私が嫌いじゃないことはよくわかる

小さいのによくお話をしてくれたり好きな音楽を聴かせてくれた

 

ママ、パパへ

大丈夫だから何も心配しなくて大丈夫だから

だから、、、悲しまないで寂しいがらないで

あなたを忘れはしない、決して独りではない

必ず心の中では繋がっていよう

また願いが叶うならあなた達のもとに宿りたい

そして空とあなたに会いたい

手のひら

今日は幕を閉じる日でしょうね

その前にあなたは私に似合う眼鏡を買う

いとおしい

あなた好みの服はあたしに似合ってるかしら

どうかしら?

景色は変わる

あなたの瞳と声で包まれる

これだけで幸せ

蝉達の鳴き声が華やかだ

風はひらひらと静か

生い茂る自然に横たわる

そっと手を握る

絡み合う

手は硬く強く離れない

「ごめんなさい」

先に行ってしまうことに

あなたをおいて行ってしまうことに

 

レンズ越しにあなたを触れるそしてなぞる、なぞる、なぞる

苦しい

意識は朦朧とするけどあなたを最後まで見つめる

もう思いを伝えることは出来ないから

せめて唇を動かす

最後までそばにいてくれてありがとう

愛してる

 

 

 

番い

ドアの手前には美しい金魚が優雅に番いで暮らしていた
「鮮やかね」
「綺麗でしょ」
水槽はとても大きいようだ
黒酢の壷を連想させた

金魚を見るといつも狭い水槽で息苦しいそうの見える
複数の中にいるもの息がつまりそうだ
窮屈な水の中ので溺れ水死するような妄想をしてしまう
この金魚の番いにはそうは思えなかった

世界で自分と自分と同じ人間が2人っきりになったときお互いの存在を慈しむことが出来るだろうか
同じ風、同じ音、そして争わないこと、殺めないこと

この番いの金魚は平和そうだ
人間達の目に美しくゆったりと映る
羨ましい

「触っていい?」
「え?触るの?」
「抱っこしたい」
「それはちょっと無理かな」

誰にも触れられない手に取ることが不可能なものがそこにはあった

死なない努力

半年ぐらいの付き合いをしている友人がいる

彼は私の持病を知っており良き理解者だ

そんな彼は私にこう言った

「お前が死にたくなった時何があったかは分からないけど死ぬなとは一応止めるがそれから先は自分で決めるといい」

正直驚いた

彼は元々警察官で私みたいなどうしょうのない人間をたくさん見てきたのだろう

「ねぇ、もし私が死んでしまった時どうする?」

「どんな形であろうとも受け入れるよ、人生においてそう自分の意志で選択したのならいいじゃないかと俺は思うよ」

「ありがとう」

 

ずっと自分は必要な人間なのか

何故生まれてきたのか

とネガティブに考えてきた

そして私はどうしようもない自分にある誓を立てる

『死なない努力をする』

時は進み今年29年を迎える

感想としては自分で自分を少しずつだが救えている気がする

自分を大事に出来ているだろうか

10代の時に自分を放り投げた傷跡は今の私に何を思うのか、遠くで、遠くで、遠くで

 

薄暗いトンネルの中彼に問う

「お葬式は何を持って来てくれるの?」

「葬式になんか行かないよ、基本的に身内以外行かない、あまり意味を感じない」

私は鼻で微笑んだ。

未来の事は分からない

今後、誓を破り、死を選んだ時彼にだけには怒られなさそうだ

唯一受け入れてもらえそうな気がする

夕暮れの別れ道彼は何気なく言う

「またな」

「うん、いつもありがとう」

 

辺りは冷たい風が吹き頬を打ち痛くて震える

明日は何が待っているのだろう

消えない想いと一緒に私このまま、ごめんね

つらい別れをした

もう私の冷たい手をつなぎ合わせることも二度とない

愛してるの言葉もくれない

 

赤いオープンカーはいつも目立っていた

かなりの愛車なようだ

私と会う前日にいつも洗車してるようだった

低い車体から降りて「おはよう」の一言でドキドキものだ

運転中の彼の手を見るととても綺麗だった

「手とてもきれいだね」

「よく言われる」

男の人にしてはとても綺麗な手をしていた

そんな綺麗な手は車に乗るといつも忙しい

マニアル車だったから左手がギアチェンジでがちゃがちゃ

私が「運転中手繋げないね」って言うと

左手で手を繋いで右手でハンドルとギアチェンジをしてたものだ

真夏のある日オープンにして車を走らせた

照りつける太陽と熱風でジリジリ焼ける

車を止まらせオープンを閉じる時手動なことに驚いた

「これ手動なの?」

「手動だよだから将来ポルシェに乗るのが夢なんだ」

車好きだった

 

告白の時もよく覚えてる

山方面に車を走らせ車内がガタガタ揺れてどこに連れて行かれるのかと思った

駐車場に車を止め外に出ると夜景に街灯が少し広がっていた

景色を見ていると彼が後ろからそっと抱きつく

「俺と付き合ってほしい」

彼は真剣だ

とても嬉しいかったけど私の答えはいいえだった

今までの恋愛があまり上手くいくことが少なかった為なかなか踏み出せなかった

だが私達は2人で遊びにいくことをし続け結局付き合うことになる

デートはどこに行っただろうか

どこにでもつれて行ってくれた

町を歩くときもショッピングモールに入る時も手を自然と繋いでいたものだ

お昼はいつも彼がレストランを予約していた

彼は料理人のこともあっていろいろな料理を食べるのが好きだった

ある時

「私と初めて会ったときどうだった?」と彼に聞いたことがある

「次に繋げようと必死だったよ」とその時から私のことが好きだったことを知った

デートの最後はいつもセックス

行為の後に彼が

「別にただ性欲を満たす為にセックスをしてるわけじゃない。愛情表現の一貫としているよ」

その言葉だけで心が満たされた

体を重ね合う意味が持てた

心の底から愛されてるんだなという実感出来た

女性経験が少なく不器用なキスぎこちない体の重なり

しかしそれも許せていとおしく感じるようになった

これが愛なのだろうか

 

そんな私達も別れることになった

別れは私から告げた

私達はよく似ていた

自分の孤独を埋める為に相手に依存していた

だから自分自身の為に何も出来ない弱い人間なのだ

愛してるこそ離れなくてはいけないと思った

お互いの為だった

愛がこんなに難しくて苦しいなんて思わなかった

暗い街灯の光がはしる車で流れてた曲を今でも覚えてる
とてもあなたのことが好きだった

色褪せない愛なんてあるのだろうか

時がたてば忘れるのだろうか

だけど今は寂しい苦しいつらい